酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

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水の硬度がお酒の味を左右する!

昨日は日本酒作りに欠かせない『水』の話を途中までしました。

 

良かったら、昨日のコチラの記事も読んでみてください。

日本酒造りにとっての『水』とは? - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

で昨日は、硬水として有名な灘の「宮水」も、結局は「軟水」だってことで話が終わってしまいました。今日はその辺りのことを詳しく説明していきますが、、、

 

その前に、仕込んだ水が硬水か軟水かによって出来上がった日本酒の味わいにどんな違いがあるのかについてです。その違いから「男酒」「女酒」というという言葉も生まれました。

 

硬水か軟水か、、、仕込む水で変化する日本酒の味わい

まずここで言う「硬水」「軟水」の定義は、国税庁所定分析法による酒造用水の硬度です。

 

仕込む水のミネラル量の違いによって、出来上がりの日本酒の味わいには違いが出てきます。

 

<硬水で仕込んだ場合>

ミネラルを多く含む硬水をそのまま飲むと、口当たりがやや重くクセがあると感じるかもしれません。

 

ミネラルは麹菌や酵母など日本酒造りに欠かせない微生物たちの栄養源で、ミネラルが多くあることによって、発酵は早く進みやすくなります。そして出来上がった日本酒はしっかりとして力強く、酸が強めでキリッと引き締まった辛口になります。

 

このようなお酒を、その味わいのイメージから「男酒」と呼びます。有名なのは「灘の男酒」でしょう。

 

<軟水で仕込んだ場合>

ミネラルの少ない軟水をそのまま飲んだ場合には、クセがなく柔らかく感じるでしょう。

 

日本酒を軟水で仕込んだ場合、微生物たちの栄養が少ないために発酵はゆっくりと進みます。糖分は少しずつアルコールに変わっていくため、比較的甘口で柔らかい、優しい味わいの日本酒になりやすくなります。

 

このようなお酒を、その味わいのイメージから「女酒」と呼びます。「伏見の女酒」と言う言葉もあります。他に広島のお酒も、軟水で仕込まれた優しい味わいの日本酒です。

 

 

 

歴史的に有名な兵庫県の「灘の宮水」

 

全国的にも有名な硬水は、兵庫県の「灘の宮水」です。兵庫県の灘の辺りは、昔から日本を代表する酒どころの一つとして知られています。

 

灘の酒を造っている地域は「灘五郷(なだごごう)」と呼ばれます。「今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷」の5つの地域からなっていて、現在は兵庫県の西宮市と神戸市に分かれています。

 

1834、5年(天保5、6年)ごろのことでした(いくつか説があり)。櫻正宗の六代目蔵元の山邑太左衛門(やまむらたざえもん)は西宮郷と魚崎郷とで酒造りをしていました。

 

ある時、彼は西宮郷で造った酒の方が魚崎郷のものよりも品質が良いことに気がつきます。そこで同じ原料米で、両方の酒蔵の杜氏を交代させて、もう一度酒を造らせてみました。その結果、やはり西宮郷の酒の方が優れているのです。

 

次に西宮郷で使っている井戸水を魚崎郷へ運び、その水で酒を仕込んでみました。すると西宮郷と同じ品質の酒を造ることができたのです。

 

こうして「宮水」の存在が発見されました。最初の頃は、西宮のえびす神社近くの井戸水だったため「西宮の水」と呼ばれていたのですが、やがて略して「宮水」と呼ばれるようになりました。

 

私は神社のそばで湧き出る貴重な水だから「宮水」と名付けられたのだと思っていました。「西宮の水」からの「宮水」だとは思ってもいませんでした。

 

「宮水」の湧き出る場所は西宮の海岸から約1kmほどのところにある井戸です。東西、南北ともに500mくらいの狭い地域で湧き出ている水で、近くで井戸を掘っても宮水の水脈に当たらないということもありました。そこで宮水を売る「水屋」という商売も出てきたそうです。

 

宮水は硬水で、リン酸やカリウムなど発酵を進みやすくしてくれるミネラルが多く含まれます。そして酒にとって有害な鉄はほとんど含みません。

 

そんな水で仕込んだお酒はアルコール度数が高い辛口になり、「男酒」とも呼ばれるようになりました。このお酒は江戸まで船で運んでもその保存に耐えられ、そんなことから「下り酒」としても有名になりました。

 

硬水の宮水で仕込んだ灘の酒に対して、軟水で仕込んだ酒として有名なのが京都の伏見の酒や広島の酒です。これらの地域には優しい味わいのお酒が多いとされ、「女酒」とも呼ばれます。

 

実際、硬度はどれくらい?

では、日本の各地の水の硬度はどのくらいなのでしょうか?

 

いろいろな情報があり微妙にその数値は違っていたのですが、それらの中から正しそうなものをピックアップしてみました。そしてその硬度をドイツ硬度とアメリカ硬度で書き出してみます。

 

日常の中では、ミネラルウォーターなどでアメリカ硬度を見る機会が多いので、その方が比較になりやすいかと思いました。

 

(同じ県内でも、場所によって硬度は全然違ってきます。)

 

 

 

ドイツ硬度

アメリカ硬度

静岡

1

17.8

新潟

3

53.4

伏見

4

71.2

広島西条

4.5

80.1

東京都内水道

5.5

97.9

灘の宮水

6.5

115.7

山形県「山形正宗」

7.1

127

神奈川県「いずみ橋」

7.9

140

フランス「エヴィアン」

16.8

299

フランス「コントレックス」

87

1551

 

WHOの水の硬度の基準では、簡単に言うとアメリカ硬度で120未満は軟水、120以上は硬水とされます。

 

世界の水と比べてみると、日本の水はほとんどが軟水です。多くが軟水という中では、灘の宮水は硬度が高い方でしょう。でもアメリカ硬度で115.7なら、軟水です。(中硬水とされることもあります)

 

ただし 灘の宮水の硬度については、調べる資料によって数値がまちまちでした。ドイツ硬度で8-9くらいと書かれているものもあり、その場合アメリカ硬度で142-160くらいで硬水と言えます。

 

日本の水の中で見ると、宮水はだいぶ硬度が高めの水だと思います。でも世界の「硬水」と言われている水からしたら、それほど硬度が高いわけでもないようです。

 

 

 なお、これらの数値は間違いがないように調べていますが、もしかすると間違っている部分があるかもしれません。なにかおかしい部分があれば、教えてください。

 

 

 

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