酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

日本酒と猫、そして時々は横浜情報を織り交ぜつつ。。。

20-30年近く前は純米酒なんてほぼ存在しなかった、らしい。。。

先日、図書館で借りてきた『日本の酒造り唄』という本。

20年以上前に出版された本で、今読むといろいろとツッコミどころがあったり、へぇ〜と思うことがあったりします。

 

 

 

この本のことはコチラにも書きました。

20年以上も前に出版された酒造り唄の本を発見!! - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

 

この本、本文の最初の一言目から「んっ??」と一瞬止まってしまうような書き出しです。

 

その書き出しとは、、、

『日本酒は純米酒だった』と言いますと、そんな馬鹿な事がと思われるでしょうか?                                             引用:『日本の酒造り唄』より 

 

いや、、、別に馬鹿な事がと思わないけど。。。え、何を言ってんの!?

 

20年前の日本酒って、どんなだったんでしょうね?ちょっと気になったこのお話、深掘りしてみました。

 

20-30年前、純米酒は幻のお酒だった、、、らしい

この本の本文の一番最初の章、そのタイトルは『日本酒は純米酒だった』です。そしてその書き出しが上記の文章なのです。

 

めちゃくちゃひっかりませんか?

思わず、校正ミスかと疑っちゃいます^^;

 

今現在、純米酒は当たり前です。なんなら「アルコールを添加した日本酒なんてダメだ!純米酒こそが日本酒だ!!」っていう意見があるほどです。

 

それなのに20-30年前の常識では、混ぜ物で増量している日本酒ってのが普通だったらしいです。

 

この本は22年前の1997年出版ですが、この文章を書いているのはもっと前だと思うので、日本酒には混ぜ物をするのが普通だったのは25〜30年前のことでしょう。

 

 

 

 

1987年ごろ、純米酒は日本酒全体のたった2%だった

この本によると、1987年の純米酒の販売量は日本酒全体の2%弱しかなかったそうです。この頃に販売されていたほとんどのお酒は、アルコールや糖類(水飴・ブドウ糖・ミリンなど)が添加されていました。添加することでカサ増ししていたのです。

 

もちろん現在でも、醸造アルコールを添加してお酒を造ることはあります。ただし特定名称酒での添加の場合には使用量に決まりがあり、良い酒質にする目的などで使われています。

 

1987年頃、たった30年ちょっと前の日本酒は今とは全く違ったようです。その頃の日本酒の原材料は、ほとんどが次の2つのタイプでした。

 

  1. 米・米麹・醸造アルコール(白米1トン当たり280L以下)
  2. 米・米麹・醸造アルコール(白米1トン当たり280L以下)・醸造用糖類

 

このうちの「2」に当てはまるのが「三増酒(三倍増醸酒)」なんです。「三増酒」って聞いたことありますか?めちゃくちゃ悪者扱いされている、昔は流行っていたお酒です。

 

「三増酒」は戦中戦後の米不足により生まれた

「三増酒(さんぞうしゅ)」と言うのは、戦後の高度成長期に広く出回っていたお酒です。日本酒1に対して醸造アルコール1、醸造用糖類1の割合で造られていて、量を三倍に増やしているため「三増酒(三倍増醸酒)」と呼ばれます。

 

酔うためのお酒とも言えるもので、「日本酒は他のお酒よりも悪酔しやすい」というイメージがついてしまった原因はこの三増酒にあると言われます。

 

あまり良いイメージのない三増酒ですが、これが生まれたころの背景を考えると仕方がなかったのかもしれません。戦争により原料のお米が不足してしまっていた時代、必要な量のお酒を確保するためにはカサ増しをすることは合理的でした。

 

戦後は米不足に加えて、戦争から多くの兵士たちが帰ってきたため必要なお酒の量も増えました。そんな時代に生まれた三増酒でしたが、戦後50年近くが経った1987年頃もまだ広く出回っていたようです。

 

しかしこの頃はもっと良い日本酒を造ろうという動きも出てきていました。この本によると、「最近(1990年ごろ?)は日本酒の純米化を提唱する人達も増えてきているから、今後純米酒の割合も増えていくだろう」と書かれています。

 

この本の著者さんに、30年後の現在の様子を教えてあげたいですね。

 

旨い酒なら三増酒、良い酒なら純米酒や吟醸酒!?

1990年に酒税法が改正されて特定名称制度(純米酒、純米吟醸酒、、、といった名称)が制定されましたが、それ以前、お酒は特級酒、一級酒、二級酒と言われていました。実は特級酒や一級酒にも、三増酒がたくさんあったそうです。

 

(この本の著者が言うには)特級酒や一級酒は良いお酒を選んでいたわけではなく、口当たりが良くて旨い、飲みやすい酒を選んでいました。いろんな混ぜ物の入った三増酒は飲みやすくて旨いため特級酒に選ばれていたのです。

 

特級酒や一級酒などの申請をするには費用がかかりますが、申請をして通れば消費者からは「これは良いお酒だ」と思ってもらえます。そして国税局としては、特級酒の方が税金を高く徴収できました。

 

申請をするのはお金に余裕のある大手や中堅クラスの酒造メーカーが多かったようで、小さな酒蔵は申請をせず、丁寧に造ったお酒をあえて二級酒として売っていました。地方に行くと二級酒なのに良い酒があると言われた時期がありましたが、それがこのような二級酒になります。

 

で、この本で気になったのは「旨い酒を飲みたいなら三増酒のような混ぜ物の入ったお酒、良い酒を飲むなら純米酒や吟醸酒がよい」と言っている点です。

 

じゃあ、旨い酒と言えるのは純米酒や吟醸酒ではなく三増酒ってこと?いや、どうせ飲むなら旨い酒がいいよね。そしたら純米酒なんかじゃなく三増酒が良いってこと?このころの常識に対して、疑問がたくさんです。

 

「最終的には好みに合わせて飲めばいいけれど、少なくとも一度は本物の酒である純米酒や吟醸酒を飲んでみて欲しい」とも言っています。

 

「少なくとも一度は」と言うほどに、この頃は純米酒や吟醸酒を飲む機会がなかったんですね。

 

この本の著者さんとしては、「三増酒は旨いけれど本物の日本酒ではない、本物の日本酒は純米酒だ」と言う感じなのでしょうか??微妙だけど、旨いと思うものを飲む方が正しい気もするけどなぁ。

 

いくつか疑問点もありましたが、まぁとにかく、1990年前後は世の中のお酒といったら三増酒が主で、純米酒なんてほぼ出回ってなかったようです。「一度は飲んだ方がいい」と言うほどに、純米酒に出会う機会がなかったんですね。

 

今の時代に日本酒好きになって良かったです。(今の時代の日本酒だから好きになったのか^^) でも一度、三増酒って飲んでみたい気もする。。。

 

 

20-30年前なんて、日本酒の長い歴史に比べたらついこの間だと思うのに、現在とはいろいろ違っていたんですね。面白いです。

 

 

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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