昨日、「猫の恋」や「恋猫」は春の季語とお伝えしましたが、、、
「獺の祭(カワウソのまつり)」も春の季語になるってことをご存知でしたか?
「獺の祭」→そう、あの「獺祭(だっさい)」です!
日本酒はあまり飲んだことがないという人でも、「獺祭」の名前は聞いたことがあるでしょう。
山口県岩国市にある旭酒造株式会社が造っている日本酒であり、日本を代表するとも言えるほど有名な日本酒です。
日本国内のみならず世界中で、美味しい日本酒としてその名前を知られています。
先日、羽田空港に遊びに行った時(飛行機に乗るためでも、誰かのお迎えのためでもなく、”遊びに”行きました。飛行機にそれほど興味がある訳ではないですが、飲み物を買って屋上でただ飛行機を眺めてるのって、いい気分転換でしたよ)、空港の売店にも獺祭が並べてありました。「さすが日本を代表する日本酒だな」という感じでした。
2018年7月には豪雨により蔵が浸水してしまい、また停電によって蔵の温度管理ができないために獺祭の製造ができなくなったと大きなニュースになりました。
その後、本来の獺祭の品質ではないため「獺祭」としては販売できないものを、「獺祭 島耕作」として販売して完売させました。その売り上げの一部は、被災した地域への義援金として使われたそうです。
春になると、川辺ではカワウソたちが祭りを繰り広げる
「獺の祭」は「カワウソのまつり」と読みます。
「カワウソ」は、、、そうです、あの水辺に生息していて、泳ぎが上手くて可愛らしいカワウソです。昔は日本中でその姿を見ることができましたが、現在「ニホンカワウソ」は絶滅したとも言われています。
カワウソは魚が肥えて美味しい春になると、魚を捕まえてきては食べる前に水辺に並べる習性があると言われているのです。
可愛らしいカワウソたちが川に潜り魚を捕らえてきては川岸に並べ、「今日も大漁だったね、お父さんはさすがだね〜。」などと家族団らんしている様子を思い浮かべてみてください。なんか、ほっこりしませんか。
まぁ実際には、「祭り」はフェステイバルの意味ではなく、捕らえた魚を供物として並べて「祀る」ということのようですが。
でも大漁のお祝いにみんなでお祭り騒ぎをしているカワウソたちの図も、捨てがたいものがありませんか。
私に絵心があればカワウソたちのお祭りのイラストを書くのですが、絵は全く描けないので諦めました。
出典は中国の漢代に成立した「礼記」という書物
「獺の祭」が春の季語とされた歴史を遡ると、漢代の「礼記(らいき)」に行き着きます。
「礼記」は中国の漢代に成立した書物で、年中行事についてなどいろいろなことが記されています。その中で正月(太陽暦でほぼ2月)の部分に「獺魚を祭る」とあるのです。
そして「この時期は魚が肥えて美味なので、獺はこれを食べる前にまず祭る」とも書かれているそうです。
松尾芭蕉も「獺の祭」を季語に、俳句を詠んでいます。
「獺の祭見て来よ瀬田の奥」 (1690年、松尾芭蕉)
この句には「膳所(ぜぜ)に行く人に」と前置きがあります。
膳所は滋賀県大津市にある地名で、旅立つ人に向けて「膳所に行くなら琵琶湖から流れ出す瀬田川の流れる瀬田にも近い。瀬田の奥ではカワウソが祭りをしているかもしれないから是非見てきなさい」という意味なのだそうです。
ただし、本当に春になるとカワウソたちが捕らえた魚を川辺に並べて祭りをしているのかというと、これについてはよくわかっていないようです。
人間たちには見つからない人里離れた川辺でやっていて欲しいなぁ。。。と密かに思ってしまいます。
正岡子規の書斎は「獺祭書屋」
中国の唐代の詩人李商隠は、詩を書くときに自分の机の周辺にたくさんの資料を並べました。そしてそんな自分の行動を「獺の祭」と例えました。
それに倣って正岡子規も、つい机の周りにいろいろと本を並べてしまっている自分の書斎のことを「獺祭書屋(だっさいしょおく)」と名付けたそうです。
我が家の机の周りもいつでも「獺祭」状態ですから、これからは「獺祭部屋」と名付けてみても良さそうです。ついつい、気づくといろいろ広がって行くんですよね~。
正岡子規の命日9月19日、この日は「獺祭忌」とも呼ばれます。
日本酒「獺祭」の名前の由来は、旭酒造の所在地の地名
「獺祭」の名前の由来は、旭酒造の所在地の地名にあるそうです。
旭酒造の住所は
山口県岩国市周東町獺越です。
「獺越」の由来は、「川上村に古い獺がいて、その獺が子供を化かしてこの村の辺りまで追越してきた」ことにあるそうです。
地名の「獺越」から一字を取って「獺祭」という銘柄名にしたそうです。
(旭酒造サイトより)
可愛いイメージしかないカワウソですが、実は昔話の中では人を化かしたり殺したりするんですよね。なんだか、、、現在のカワウソのイメージと全然違いますね。
というわけで、日本酒「獺祭」の名称についてでした。
名称の由来は地名からのようですが、獺祭を見かけるたびにカワウソたちのお祭り騒ぎを思い出すと、ちょっと楽しく飲めそうです。