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酒米の世界の長老「雄町」にまつわる物語②

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昨日は最長老の酒米「雄町」の話をしました。

今日もその続きです。

 

昨日の記事はコチラになります。

酒米の世界の長老「雄町」にまつわる物語① - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

 

昨日は「雄町」が酒米のトップとして輝いていた時代の話でした。

 

しかし残念ながら、そんな栄光は長くは続かなかったのです。今日は「雄町」が幻の酒米と言われた哀しい時代と、その後の復活の物語です。

 

酒米のトップだった「雄町」が一転、幻の酒米に。。。

酒米のトップだった「雄町」ですが、次第に生産量が落ちていきます。

 

「雄町」は酒米としての品質は高く認められていましたが、栽培にはとても難しい品種でした。稲の背丈が高いために台風などが来ると倒れやすく、また病気にも弱かったのです。収穫できる量が少ないという欠点もありました。

 

また時代的に、酒米などよりも主食用の飯米の確保が重要と考えられました。そのような流れから、農家では徐々に生産されなくなっていってしまったのです。そんなこんなで、昭和40年代には生産量がかなり激減しました。

 

全国の酒蔵が「雄町」を使いたいと思っていましたが、生産量が少ないために手に入れることができず、「幻の酒米」と言われるようになっていってしまったのです。

 

幻の「雄町」に復活の兆し!1990年代に生産量が増加

一度は生産量が激減してしまった「雄町」でしたが、昭和50年代になるとまた生産をしようという流れが出てきます。

 

そして「雄町」の故郷の岡山県では、昭和63年から5年間かけて「雄町」をもっと生産しようというキャンペーンが行われました。(「おかやま雄町米GOGO運動推進事業」)

 

このようなおかげで、1990年代(平成2年ごろ)には「雄町」の生産量が増加していきます。平成4年には岡山県の特産米という地位を勝ち取ったのです。

 

また1992年(平成4年)にあった「日本酒級別制度廃止」という出来事も、「雄町」の生産増加の後押しになったようです。

 

それまで日本酒は「特級」「一級」「二級」などと級別で分類されて課税が行われていました。この級別と日本酒としての品質の良し悪しはあまり関連していませんでした。

その級別の制度が廃止され現在の特定名称酒の分類(「吟醸酒」や「純米酒」など)になったことで日本酒を造る側の意識も変わり、品質も良くなってきたとされています。

 

全国の酒蔵では特定名称酒の原料として「雄町」を求める声が大きくなりました。その結果、需要が増大したことで生産を増やす取り組みが行われました。そうして現在、生産量は年々増えてきています。

 

 

 

 

「雄町」の特徴とは?

酒米「雄町」の特徴をみてみましょう。

 

  • 千粒重:27.3gで大粒
  • 稲の背丈が高いために、台風などで倒れやすい
  • いもち病などの病気に弱い
  • 晩生で10月下旬に成熟期を迎える
  • 収穫できる量が少ない
  • 心白発現率は高いが、軟質で心白が大きいために高精白が難しい
  • 蒸米にした時にさばけが良く、外硬内軟なとても良い状態になりやすい
  • 味に幅のある個性的な酒質になる、独特なやさしさとまろやかさがある

 

「雄町」は酒蔵にとっては良い酒質の日本酒を醸せる優れた酒米ですが、生産農家にとっては栽培が難しく厄介な品種のようです。

 

そのため価格も高く、一般米の倍近くするそうです。そんなお米をさらに磨いて日本酒にするのですから、日本酒が高くても納得ですね。

 

「〇〇雄町」がたくさん存在するけれど、大きく分ければ2グループ

「雄町」には生産地の地名をつけた「備前雄町」や「赤磐雄町」など、いろいろな「〇〇雄町」があります。「雄町」と言えば岡山県産が一番有名ですが、それ以外にも兵庫県や広島県など各地で作られています。

 

稲のような植物では、各地で長年栽培されているうちに、その土地に適した独特の品質に少しずつ変化していっています。そのため栽培された土地が違うと、同じ「雄町」でも全く同じというわけではなくなります。

 

「雄町」のグルーブの一つは、他の遺伝子が入っていない純系の「雄町」です。

 

このグループに入るものは「備前雄町」「赤磐雄町」「畿内雄町」「船木雄町」「比婆雄町」などがあります。

 

これらはそれが栽培された土地で淘汰されて残った、一番優秀な「雄町」になります。他の品種の遺伝子は全く入っていない、純系の「雄町」です。「雄町」そのものと言って良いでしょう。

 

そしてもう一つの「雄町」のグループは、「雄町」に他の品種を交配育成してできた品種で、他の品種の遺伝子も入っています。

 

このグループに入るのは「改良雄町」「こいおまち」「兵庫雄町」などです。

 

これらは「雄町」に他の品種を交配して誕生した品種です。「雄町」の短所を改善するために、他の品種の遺伝子を入れてさらに優秀な酒米を作ろうとして生まれたものになります。

 

注意が必要なのは「広島雄町」です。広島県では「改良雄町」をただの「雄町」と呼ぶようで、そのため広島県産「雄町」や「広島雄町」と書かれたものは、実際は「改良雄町」だったりするそうなのです。

 

「雄町」や「〇〇雄町」と書かれていても、いろいろ複雑みたいですね。それだけ「雄町」は人気があるということでしょうか。

 

「雄町」の子孫たち

 「雄町」の遺伝子を受け継いだ子孫は、かなり多くいます。現在の酒米の約6割に「雄町」の遺伝子が入っているそうなのです。長年、「雄町」の優秀さがたくさんの人たちに認められてきたってことですよね。

 

子孫として一番有名なのは「山田錦」と「五百万石」でしょう。

 

昨日も書きましたが、「山田錦」は「短稈渡船」と「山田穂」の交配によって生まれました。「渡船」は「雄町」と同一の品種と考えられています。

 

「渡船」については、コチラにも書いています。

酒米の王様「山田錦」のルーツ②、、、とゆうか「渡船」のこと - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

そして、その「山田錦」の子孫たちがたくさんいますから、つまりそれらは「雄町」の子孫でもあるわけですね。

で、「山田錦」の子孫については、コチラに書きました。

日本各地に広がる「山田錦」の子孫たち - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

 

「五百万石」は「菊水」と「新200号」の交配によって誕生しましたが、「菊水」は「雄町」の欠点を改良しようと生まれた品種です。つまり「五百万石」にも「雄町」の遺伝子が受け継がれているのです。

 

 

 

「雄町」は最近とても注目されていて、あの「山田錦」にも負けず劣らずの人気だそうです。生産量では「山田錦」よりずいぶん少ないのですが、それでもそれだけの人気なんですね。「雄町」ファンのことを「オマチスト」と呼んだりもするそうです。

 

 

 

ということで、今日は「雄町」のお話でした。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

いつか酒米ごとの飲み比べとかやってみたいですね。どっかでやっているセミナーとかに、出てみようかなぁ〜

 

 

 

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