日本酒造りに適したお米「酒米(酒造好適米)」にはたくさんの品種がありますが、その代表と言えば「山田錦」「五百万石」「美山錦」「雄町」などでしょう。
これらは育てやすくてお酒の仕込みの際にも扱いやすいように、そしてさらにもっと美味しいお酒になるようにと研究、品種改良が行われて生まれた品種になります。
今日はこれらがどんな品種から生まれたのか、その両親を辿ってみましょう。
と、、、その前に、(どーでもいいことかもしれませんが)稲の品種改良ってどうやってやるのかも見てみましょう。調べていたら気になってきてしまって、、、
稲の品種改良はこうやってやる!
品種改良について調べていたところ、わかりやすく書いてあるサイト(子供向け?)がありました。食事用の飯米の稲についての品種改良について書かれているのですが、酒米でもやり方は同じでしょう。
品種改良にはいくつかの方法があります。例えば、、、
- 交雑育種法:人の手で「かけあわせ」て、新しい品種を生み出す
- 分離育種法:田んぼに自然に生えてきた普通とは違う性質の稲を見つけ出し、それを増やしていく
- 放射線育種法:放射線を当てることで、異なる性質の稲を生み出す
- 遺伝子組み換え:遺伝子を入れ替えることで、変えたい性質の部分だけを変える
酒米の品種改良には「交雑育種法(こうざついくしゅほう)」という方法が多く使われています。良さそうな2種類の品種をかけあわせて、もっと良い新しい品種を生み出すという方法です。
ただし美山錦は例外です。
放射線照射によって誕生した「美山錦」
2種類の品種をかけあわせて新たな品種を生み出すことの多い酒米ですが、美山錦は違いました。美山錦は、ガンマ線照射による突然変異によって生み出された品種なんです。
「北陸12号」を母、「東北25号」を父としてかけあわせて生まれた「高嶺錦(たかねにしき)」という品種があります。これは1939年(昭和14年)に長野県で誕生した品種で、かつては吟醸造りに欠かせない品種として重宝されていたそうです。
で、この「高嶺錦」にガンマ線を照射して生まれたのが「美山錦」なのです。「美山錦」は1978年(昭和53年)、長野県で誕生しました。冷涼な土地でも育つ品種とされ、長野県や東北地方を中心に栽培されています。
美山錦で醸したお酒はスッキリとした味わいになるそうです。心白は山田錦ほどは大きくありませんが、北アルプスの山々に残る雪のような心白があるとして「美山錦」と名付けられたそうです。
以前酒蔵でいろいろと試飲をしたときに、美山錦で醸したお酒が自分の好みだなって気づきました。「美山錦」という美しい響きもあって、結構気に入っている酒米だったのですがガンマ線照射で生まれているんですね。。。
日本で初めてガンマ線照射によって生まれた農作物は「レイメイ」という飯米なんだそうです。一時期はメジャーなお米だったようですが、今はあまり生産されていないようです。
現在では放射線照射によって新しい品種を生み出すことは、たぶん当たり前のことになっていると思います。普段口にしているものにも多いのかもしれませんが、「放射線照射」したって聞くと、なんか微妙な気分になりますね〜。
さて、そんな美山錦を親として誕生した子供も多くいます。
例えば山形県が勢力を上げて研究開発して誕生した「出羽燦々」という酒米、これは「美山錦」と「華吹雪」とをかけあわせて誕生しています。開発には11年の年月がかかり、1995年(平成7年)に晴れて山形県オリジナルの酒米第一号として誕生しました。
交雑育種法によって生まれた酒米たち
多くの酒米は「交雑育種法(こうざついくしゅほう)」によって誕生しています。酒米として良い特徴のある2種類の品種をかけあわせて、もっと優良な品種を生み出す方法です。
この方法で生まれた酒米について、両親が分かる範囲で書き出してみました。育成年が「ー」となっている部分は、よくわからなかったものです。
品種 |
育成年 |
育成場所 |
母 |
父 |
山田錦 |
1936年(昭和11年) |
兵庫県 |
山田穂 |
短桿渡船 |
五百万石 |
1956年(昭和31年) |
新潟県 |
菊水 |
新200号 |
出羽燦々 |
1995年(平成7年) |
山形県 |
美山錦 |
華吹雪 |
千本錦 |
1998年(平成10年) |
広島県 |
中生新千本 |
山田錦 |
秋田酒こまち |
2001年(平成13年) |
秋田県 |
秋系酒251 |
秋系酒306 |
越淡麗 |
2004年(平成16年) |
新潟県 |
山田錦 |
五百万石 |
彗星 |
2004年(平成16年) |
北海道 |
初雫 |
吟風 |
一本〆 |
ー |
新潟県 |
五百万石 |
豊盃 |
佐香錦 |
ー |
島根県 |
改良八反流 |
金紋錦 |
ちゃんと、どちらが「母」でどちらが「父」かも決まっています。2つの品種をかけあわせたのだから、どちらが「母」「父」になっても良いわけではなく、ちゃんとどっちが「母」なのか、どっちが「父」なのかとはっきり決まっているのです。
なぜか、、、?
かけあわせる方法を具体的に書けば納得の「母」「父」ですが、、、
母となる稲のめしべに、父となる稲の花粉をかけてあげて、そして新しい品種が生まれます。だから「母」と「父」がはっきりしているのです。
言われてみれば、まぁ、そうだろうなぁって感じですね。
母と父をかけあわせて、新しい品種として実際に使える品種になるまでの道のり。。。お酒の話とは離れてしまいますが、次回はそれを書きます^0^//
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