酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

日本酒と猫、そして時々は横浜情報を織り交ぜつつ。。。

泡あり酵母と泡なし酵母。。。今は泡なしが主流に

お酒を造るためにはなくてはならない存在の「酵母」。

そんな酵母にはたくさんの種類があり、「日本醸造協会」では美味しいお酒を造ることのできる優良な酵母を「協会酵母」として販売しています。

 

協会系酵母のお話は、コチラにも書いています。

協会系酵母のいろいろ - 酒猫ブログ(「酒と猫の日々」改め)

 

 

そして新しい酵母の開発は国だけでなく、都道府県単位でも盛んになっています。各都道府県で酵母を培養してそれを使うということも増えてきているのです。

 

各都道府県で開発した酵母には次にようなものがあります。

  • 山形酵母:控えめで上品な吟醸香がある
  • 長野酵母:カプロン酸エチルを多く生成するため、華やかな香りがある
  • 静岡酵母:柔らかな果実香、酸が少なく吟醸香が高い
  • 広島酵母:安定した発酵力があり、その発酵力は強い

 

さらにそれぞれの酒蔵でも家付き酵母を培養して、その酵母を使った個性のある日本酒を造ろうとする動きが出てきています。

 

このように酵母はいろいろと開発されてきていますが、どの酵母でも発酵するときには泡が出ることが常識だと思われていました。しかしある時、発酵中に泡を出さないタイプの酵母がいることがわかったのです。

 

発酵中は泡立つことが当たり前だった

酵母がアルコールを生み出すために発酵をすると、一緒に炭酸ガスも発生します。「炭酸ガス=泡」です。発酵の過程で泡が立つことはごく当たり前のことでした。

 

発酵がどの程度進んでいるかによって泡立ち方は違っていて、昔の人はこの泡の状態を見て発酵の状態をチェックしていました。発酵が盛んになってくると泡もだんだん増えていき、ピークを越えると泡は徐々に減り、やがて発酵は終了します。

 

しかし泡立つことで出でくる問題点もいくつかありました。

発酵中に泡立ち過ぎると困ること

1、発酵中に泡が出て溢れてしまうと困るため、ゆとりを持たせてタンクの容量の1/2から2/3くらいの量でしか仕込めない。タンクいっぱいに仕込めずに、ゆとり部分は無駄になってしまう。

 

2、発酵が始まるとどんどん泡立ってきてタンクから溢れんばかりになるため、寝ずの番で泡を消す作業をしなくてはいけない。(昔は人が寝ずに行っていた作業でしたが、近年は機械を使って自動で泡消しが行えるようになりました。それでもやっぱり大変です。)

 

3、泡立ち過ぎてうっかりタンクの外に泡が溢れてしまったりすると、タンクが汚れて不衛生になる。また酵母は泡にたくさんくっついているため、泡が溢れると酵母も減ってその後うまく発酵が進まなくなる。

 

そんな状態を変えてくれたのが「泡なし酵母」だったのです。

 

 

泡なし酵母の発見!日本酒造りが変わった

1963年(昭和38年)のことです。島根県のとある酒蔵で、いつもと同じように仕込んだはずなのに醪(もろみ)が泡立たないという現象が起きました。

 

当然蔵元は「これは発酵していないから失敗だ!」と思いましたが、出来上がったものは香りはやや低いもののアルコールは十分でちゃんと「お酒」になっていました。

 

この出来事がきっかけとなり、泡が出ない酵母がいることがわかってきました。そして「泡なし酵母」の開発へと進んで行くのです。

 

実は泡なし酵母が初めて発見されたのは、それよりもっと前の1916年(大正5年)のことでした。この時の発見者も、泡なし酵母を使うことで利点があることに気が付いたようです。ただこの時代はまだ知識も乏しく、泡なし酵母を使うことで逆に異常が起きてしまうかもしれないと不安もありそれっきりになってしまいました。

 

日本酒造りに使える「優秀な泡なし酵母」を見つけ出せ!

偶然の出来事から「泡なし酵母」というものが存在することはわかってきましたが、このときの酵母で造られた日本酒の味はイマイチだったようです。そこでより優秀な泡なし酵母を見つけ出そうとする研究が始まりました。

 

泡ありと泡なしとで何が違うのか顕微鏡で調べたりして、いろいろな研究が行われたました。そして元々優秀な酵母だということがわかっている「きょうかい酵母」の中から、泡なし酵母を見つけ出したのです。

 

たくさん酵母の中には、自然の中で突然変異を起こして泡が立たない性質になったものがいます。その割合はとても小さく、何億もの酵母のうちのたった1個くらいです。その1個を見つけ出して、酒造りに使えるようにしていきました。

 

今では「泡なし酵母」の方が主流に

現在では主なきょうかい酵母に全て「泡なし酵母」タイプも揃っています。まさに研究者たちの血と汗と涙の結晶でしょう。

 

泡なし酵母を使うことで仕込みはタンクいっぱいにできるようになりました。泡立って溢れる心配もないため、寝ないで泡消しの作業をするという労力も必要なくなりました。そして溢れなければ、いつでもタンクをキレイに保つこともできます。

 

泡なし酵母は良いことづくめなんですね。

 

きょうかい酵母のうち、従来の泡あり酵母は「6号」「7号」・・・と呼ばれます。そして泡なし酵母は「601号」「701号」・・・と末尾に01がついた番号で呼ばれています。

 

今では泡なし酵母を使っての酒造りの方が主流になってきているようです。ただしあえて泡なし酵母にこだわって仕込みをする酒蔵さんもいるそうです。

 

泡あり酵母で仕込みをすると、醪の中で何が起こっていて発酵がどのような状態になっているかということを目で確かめることができます。泡立ち方を指標にして仕込みを行うのです。

 

泡あり酵母で仕込んだ日本酒と、泡なし酵母で仕込んだ日本酒。味わいに違いはあるのか、試してみたいですね。

 

泡ありの方が愛情は多少多めに込められているような気も。。。?

 

 

 

 

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